拝啓

拝啓「どーせ無理」と言う皆様

想像してみてください。

あなたは家族から、友人から、恋人から、部下から、

「●●に挑戦しようと思うんだけど」

「●●をやってみようと思う」

「思い切って、●●をやめてみようと思うのですが」

と相談されました。

相談の内容はあなたが予想だにしていなかったものです。そして、

実現するのは非常に困難、または可能性がない

とすらあなたは思います。

ですが、相談してきた本人はとても真剣な目をしています。

そんなとき、あなたならどう答えますか??

※ ※ ※

最近僕は人と会うとき、意識的に「公務員を辞めようと思う」と口にするようにしています。

次にどんな仕事をするかは決まってないのに、です。

明確な意図を持って宣言し始めた訳ではないのですが、最初は人に伝えることで自分の気持ちを奮い立たせよう、くらいの意識だったと思います。

相手との関係性によって伝え方の軽重は意識しながらも、これまでに数十人に考えを伝えました。

「お前なら何かしらうまいことやっていけそうな気がするよ」

「いや〜、厳しいっしょ。辞めてどうすんの?資格とかないっしょ?」

「辞めること自体はいいとは思うけど、次にやる仕事を決めてからにすべきだと思う」

もちろん反応は人によって様々です。

人の意見によって左右されないくらいには公務員を辞めることへの決意が固まった段階で伝えていたので、決意自体が揺らぐことはありませんでした。

むしろ、この人はツラくなったときに背中を押してくれそうだな、とか、この人は客観的にリスクや課題を教えようとしてくれるな、というような「これから頼るべき人」を見つけることが出来たのは思わぬ収穫でした。

ですがある平日の夕方、雑談の延長ではあったものの、上司に「辞めようと考えている」旨伝えた際の反応が僕にはどうしても納得出来ませんでした。

「無理無理。悪いこと言わんから、夢見んのやめとけ。子どもみたいなこと言っとらんと目の前の仕事せぇ。」

(以下、心の叫びでお届けします)

はっ????

今「無理」って言いましたよね?そんなの挑戦してみないと分かんないじゃないですか!まだ挑戦もしていないことに対して無理って言うな!

「悪いこと言わんから」とか、僕のことを気遣うフリをするな!僕が失敗したってあなたに迷惑はかかりませんよ!辞めるときだってみんなに迷惑かかんないように辞めますよ。

「子どもみたいなこと言うな」ですって?じゃあ聞きますけど!何で大人でいなくちゃいけないんですか!仕事や家庭のグチ言ったり、過去の自分の自慢話したり、挑戦しようとする人に「そんなの無理」って言って足引っ張ってみたり。そんなことして今の自分を慰めるのが大人ですか!?

僕は知ってるんです!いくつになっても目をキラキラさせながら子どもみたいな顔して生きてる大人たちを!

(心の叫び、終了)

僕はこれまで、「無理」という言葉に意識を向けたことはありませんでした。

自分に対して「無理」という言葉が投げられるまで、僕は「無理」という言葉がこれほど人を苦しめるものだとは思ってもみませんでした。

もしかしたら僕も知らず知らずのうちに「無理」という言葉を使って誰かを傷つけていたかもしれません。

「無理」という言葉は、あらゆる可能性を完全にシャットアウトし、挑戦しようとしている人の心をへし折るのに十分過ぎる力を秘めています。

なぜそれほどの力を持つのか。

それはきっと「無理」という言葉は、挑戦しようとする本人が一番恐れながらも、日々戦っている「見えない何か」そのものだからだと思うんです。

挑戦する人は何かを失うことも、失敗してつまづくことも覚悟しています。

もっと言えば、自分の挑戦が結果的には、自分の夢や理想に届かないかもしれないということも覚悟しています。

ですが、そもそも自分の夢や理想は最初から実現する可能性がゼロだと知らされたとき、挑戦する人の心は折れてしまうんじゃないでしょうか。

※ ※ ※

きっと「無理」という言葉を使うのは、挑戦したことがない人たちです。

「無理」という言葉を浴びる辛さを知らない人たちです。

自分にとって困難な何かに本気で挑戦したことがある人はきっと、「無理」という言葉を使いません。

その人はきっと「無理」という言葉を浴びたことがあり、その辛さを知っているからです。

公務員を辞めるなんて、世の中のスゴい人たちの挑戦に比べればちっぽけなもんです。

ですが、挑戦が大きいか小さいかは、本人の主観によるものです。

自分で言うのも何ですが、僕は両親の努力のおかげで、これといった苦労もせずにこれまで生きてきました。

これまでに大した挑戦をしたこともありません。

だから、公務員を辞める、好きなことに本気で取り組む、誰かを幸せにすることを自分の幸せと心から思える人になる。

まだ漠然としていますが、僕にとっては今までで一番大きな挑戦です。

毎日自分を奮い立たせるために必死です。

怖いです。

「無理」という言葉を投げられるのが。

だから今後、僕は誰かに相談されたとき、絶対に「どーせ無理」とは言いません。

そのかわり、「いいね! けど、ツラくなったら頼っておいでよ!」って明るく言える“大人”になれるよう、成長したいと思います。

※ ※ ※

最後に、僕の大好きな植松努さんという方のスピーチの一節を紹介させてください。

考えてみてください。自分の夢を誰かに喋ったときに「それ無理だわぁ」と言われたら元気なんか無くなります。でも「だったらこうしてみたら」「こないだ本屋にこんな本売ってたよ」「こないだテレビでこんな番組やってたよ」って言われたら、もっと元気がわくじゃないですか。その方が絶対楽しいです。だから、お互いに夢を喋って、お互いに「だったらこうしてみたら」って言ってたら全員の夢が叶ってしまいます。

(中略)

だから是非、この「だったらこうしてみたら」が世界中で流行ったらいいなぁと。そしたら「どーせ無理」がなくなるなぁと。

(引用:You Tubeより「Hope invites / Tsutomu Uematsu / TED×Sapporo」)

バイぶ〜

(追伸)

上司に「無理無理」と言われたときには、「そっすよねぇ!」と笑いながら言って会話を終わらせました。

口は悪いけど、まぁ、なんやかんやで愛すべき上司です。