「あと漢字だけど、実は『俊伍』なんです〜」
や、やっちまった。
またやってしまった。
人の名前を間違えるというミスはこの1か月の間に3回目だ。
友人であり、宿経営の先輩でもある林 俊伍くんについて記事を投稿していたここ数日。
ボクはず〜っと「俊吾」くんと誤表記していたのである。
こんなことがあった今日の朝、ボクはゲストハウス黒島の開業に向け、ある重要な作業に取り組んでいた。
重要な作業、それは。。。
「ホームページの校正作業」
である。
ボクは幸運なことに、素晴らしく優秀で人柄も素敵なWEBデザイナーさんと出会うことができ、彼女にゲストハウス黒島のホームページ作成のお仕事を依頼している。
出来上がってきたホームページの素案も当然最高で、何度見ても「ムフフっ」と思わず鼻の下が伸びてしまうような仕上がりだ。
・親しみを持ちやすい柔らかな色調
・「漁師で猟師」をイメージした、とんでもなく可愛いイラスト
・必要な情報を過不足なく、かつ脳に流れ込むようにスムースに配置したデザイン
どこをとっても非の打ち所がなく、どれだけ眺めていても見飽きることはない。
なのに。それなのに、だ。
朝からずーっとパソコンの前に張り付くようにして校正作業にかかろうとするものの、どうも気がそぞろというか、作業が前に進まないのである。
公開は4日後。悠長なことは言っていられない。
分かってはいるのだが、腹も減っていないのに「早めの昼飯にするか」と昨晩スーパーで買った半額の弁当に手を出したかと思うと、「作業効率を上げるための昼寝だ」と自分に言い聞かせ1.5時間の昼寝を決め込む始末。
眠りから覚めれば、思いがけず開いたfacebookのページで見かけた見覚えのある顔がどうしても気になり調べ出す。「あっ、ピースの又吉さんだ」と分かると、なぜか動く又吉さんが無性に見たくなり、youtube検索して1時間ほど視聴。いかんいかん、ホームページの校正作業だ。他にも向き合うべきタスクは行列をなして、だらしのないボクを睨みつけている。
ふたたびパソコンの前に座り、ホームページの校正作業へ。
3分後、“アクセス”のところに貼ってある地図にふと目が止まる。
「あれ、そういえばGoogleマップにゲストハウス黒島を表示させるために、周辺の動画を撮らなきゃいけないんだった」と気になり始める。
もうここまで気もそぞろになってくると仕方ない。
作戦変更だ。
「そうだ、気になることを片っ端からやっつけて、その後にスッキリした気持ちでホームページの校正作業をしよう」
すぐさま車に飛び乗りゲストハウス黒島へ。
無事に用を済ませたと思った瞬間、ふとシラフに戻る感覚があった。酒も飲んでいないのにシラフに戻るとは妙だが、明らかに一瞬、酔いからさめたような感覚を覚えた。
「そうか!そうだったのか!ボクは校正作業が苦手なんだ。いや、確認作業全般か?。まぁどっちでも良い。とにかく『確認をする』という行為を求められると、永遠にそこから逃げようとする性質を持っていることだけは確かだ」
そうと分かれば話は早い。
そうだ!この感覚を忘れないうちにブログを書こう。
「そうだ!」と何かを閃いた感覚はあったが、何も閃いてはいないという客観的事実の方がボクの感覚にまさっていただろう。
しかし、そんなことはどうでもいい。
ボクはそそくさと自宅へと戻り、パソコンの前にずんっ、と座ると脱兎のごとくホームページ校正の画面を閉じた。
そして今、こうして何の意味があるのか分からないブログ記事を書いている。
それはもう、筆が進むこと進むこと。
この集中力を持ってホームページの校正作業に取り組めたらどんなに捗るだろう。
想像しながらも、向き合うべき作業からは目を背けるようにキーボードを叩き続ける。
思い返せばボクが「公務員辞めたい」なんてダサいタイトルで初のブログ記事を書いていた頃、ボクは年に1度訪れる、朝から晩までただひたすらに校正作業をする2週間の真っ只中にあった。1文字の誤字が見つかると連帯責任でフロアの担当者全員が2時間の追加残業に突入する。日付を超えることもしばしば。そして大抵の場合、「誤字事件」を起こす犯人はボクと相場は決まっていた。
もし、もしもだ。
ボクが「校正作業及びそれに類する作業一切」を断ることが可能だったなら。。。
ボクは公務員を辞めようなんて考えもせず、定年を迎えるまで勤め上げていたかもしれない。
ボクの人生において“能登へ移住した”という事実も「公務員辞めたい」に端を発したその結果であり、“ゲストハウス黒島を開業する”もまた、同じ文脈の上にあるのだ。
今ボクは、14年間勤めた県庁を辞め田舎でゲストハウスを開業するという挑戦の只中にあり、同時に人生で最高の充実と幸せを感じている。
もし仮に、知事がボクの目の前にやってきて、
「お願いだ。県庁に残ってくれ。もうキミに校正作業をさせることは二度としない。辛い思いをさせてすまなかった。給料だって2倍払う。有給休暇も年に100日与えよう。頼む!この通りだ!」
と頭を下げられたら。。。
それでもボクはこう返すだろう。
「お心遣い本当にありがとうございます。ボクが校正作業をできないばっかりに、たくさんの方々にご迷惑をおかけしました。でも、決して後ろ向きな気持ちで県庁を去るのではありません。ボクはゲストハウスを、やりたいんです」
だって、ゲストハウスやりたいもん。マジで。
校正作業は確かに嫌いだけど、そこから逃げたいが故のゲストハウスではない。
ただひたすらに、ボクはゲストハウスをやりたい。その証拠にボクの身体中ではずっと、血が湧き、肉が躍っているのだ。
ここでふと、また重要な真実に気づく。
校正作業が苦手だ→プチ鬱になる→公務員を辞めようと決意→能登に移住する→そうだ!ゲストハウスをやろう!
ん、待てよ。ということは。。。
ゲストハウス黒島が生まれるきっかけは、ボクが最も嫌で嫌で仕方なかった、あの“校正作業”そのものじゃないか!
ボクの4年間を一言にまとめてみると、こうなるんじゃないか?
「ボクは校正作業が嫌いだ。だから、ゲストハウスをやろう」
ボクは今日、人生を生きる上で重要な教訓を一つ得た。
「苦手から目を背けるな。苦手の裏には得意がある。得意の先には、栄光がある。」
知らんけど。
今朝の出来事を振り返る。
「俊伍」くんを「俊吾」くんと誤って表記していたことの指摘を受けた瞬間、ボクの頭は謝罪への添え物として必死に言い訳を考え始めていた。
「ごめん、最近人の名前間違えること多くて。気をつけていたんだけど。。。」
いや、嘘だ。
気をつけてなどいない。
人の名前を間違えた瞬間には本当に申し訳ない気持ちに苛まれるのは事実だ。
両の手で頭を掻きむしり「二度と致しません」と何度も自分に言い聞かせる。
でも、過ちは繰り返す。
気をつけていたか。
いや、気をつけてなどいない。
正確に言うとこうだ。
自分には人の名前を間違える悪い癖があると認識しているし、気をつけなければいけない、つまり「名前を間違ってはいないか」の確認作業をしなければならないという意識も当然ある。
しかしだ。
「人の名前を間違えてはいけない」 < 「確認作業したくない」
この数式は“寝ている間に油性ペンでおでこに書かれた『肉』の文字”のごとく、ボクの知らないところで無意識下に厳然と存在してガンと動かないのである。
よそう。言い訳はよそう。
名前を間違えたことは素直に謝ればいい。
自分の苦手だって、愛せばいいじゃないか。
苦手があるから得意があり、苦手がなければ得意も、また得意を活かすことで手に入れられる幸福だって存在しないんだ。
ビバ苦手。
苦手最高。
ボクは苦手が、大好きだ。
なんだか、ムズムズしてきた。
ボクは今、ホームページの校正作業がしたい。
校正画面が見たくて見たくてたまらないっ!
よし、つまらない文章を書くのはもうやめよう。
ボクはただ、真っ直ぐに校正作業に向かって愛を伝えるのだ。
最後に
最後にお知らせがあります。
ゲストハウス黒島のホームページは11月30日公開予定です。
お楽しみに。
バイぶ〜